ジェイソン・ゴーベル インタビュー1993

※このインタビューは1994年6月発行のファンジンSILENT NOISE誌に掲載されたものの再録です。

ーデビューアルバムはすごい驚きだった!力強くて、スピーディで、激しくて時に凄く綺麗で、メロディが印象的で。この音の中で君達は一体どんな感情を表現したの?

Jason:アルバムで表現した音は、ただ単に感情や感動の延長かな。
音を作る時は自分は、その…ある特別な瞬間に自分がどう感じていたかが上手く表現できる様にしている。満足して落ち着いた気分の時は綺麗で静かな音、緊張してたりなんかがっくりきてた時には楽しくない音。怒って攻撃的になった気分の時もね。
毎日の生活の繰り返しの中には色んな気分の日もある。
俺はそれらの感情を音を通して表す様にしている。また身の回りの事や、
たまたま起こる出来事でインスピレーションを受ける事もあるし。
その時々の感情をうまく捕らえて音に変えられる様には心がけているよ。

ー君は歌詞を作るのには参加してないんだね?その分、音作りの方に集中してるって事だろうか?

Jason:歌詞に関しては実際に作詞するのはPaulに任せている。
音にポジティヴで心に残るメッセージを乗せられる様に皆で話し合って意見をまとめて。それからPaulが自分だけで籠って更にインスピレーションを引き出して仕上げるんだ。
彼が歌詞を書き上げると皆がまた集まってその意味とPaulの意図するものとをまた話してみる。
皆が納得してない歌詞って今までに一つも無いね。
Paulは俺や他のメンバーが思ってたり表現したいけど言葉に出来ないテーマを上手く拾い上げてくれるんだ。
言葉に関しては彼は実際、才能があるよ。音作りは全員参加だけどね。
“Focus”アルバムではベースプレイヤーが交代してる間にキーボードパート以外ほとんど俺とポールで書き上げた。
曲を作った時はすぐ使う以外はテープに残しておく、忘れてしまわない様にね。
だからアルバムの準備段階の時はPaulと俺とでテープの山を持ち寄ったよ。
そしてそれを残さず全部聴いて、覚え易くて神秘的なリズムやフレーズを選び出して、一緒にそれをまとめ合わせるんだ。
そんな風に個々の曲の骨組みを作ってそれから本格的に曲作りに入る。
そしてそれをSean (Reinert:ds/keyboards)に聴かせてから、後は全員が満足するまで曲の細部まで作り込む。
曲作りの説明に関してはこんな感じかな。

ーCYNICが”Focus”アルバムに込めた音楽のスタイルは実に沢山の種類があるよね。自分には個人的にはヘッドバンギングしたい音なんだけど(笑)。
CYNICはごく初期はスラッシュメタルから始まったバンドだと思うけど、そこの所はどう思っていますか?

Jason:思うんだけど俺達は確実に人間的にも精神的にもプレイヤーとしても音楽的にも成長しているから。
音楽の変化は即、自分達の変化という事だと思うし。
俺自身はスラッシュメタルから出て来たことに何の問題も感じていない。自分達の音をもうスラッシュだと思っていないから。
俺達はただ自分達の音楽は音楽以外の何ものでもない、としか考えてないし。
レッテルを貼られるのは嫌だ。けどどんな風に呼ばれようと皆が自分達の音を楽しんでくれればそれで良いよ。

ーデビューアルバム”Focus”を買ってないキッズに何かお勧めの言葉をいうとしたら?

Jason:もし君がこの記事を読んで興味を持ったなら、
もし君が同じスタイルの音楽に飽き飽きしてて、そして何か違う新しいものを聴きたかったら試してみてよ。
もし誰か友達が持ってたら聴いてみて!好みかもしれないよ。アルバムの曲全部はただ楽しむ為に書いたんだ。
これは色んなタイプの音楽を楽しむ人すべてへの贈り物なんだよ。今イチかもしれないけど、すっごく気に入るかもね!

ーツアーの予定とかある?

Jason:このインタビューに答えてる時点(1993年10月)では、まだツアーは始まってない。
11月17日から5週間のヨーロッパツアーに出る事になってるんだ。
日本に行ってプレイする話も出てるんだけど、今の段階ではまだ話は固まってない。
ヨーロッパツアーから戻ってからはアメリカをツアーして、
そのツアーとアルバムの売れ行き如何に寄って日本までツアー出来るかが決まるんだ。
本当に、君達の国でプレイしたいよ。

ー君はギターを弾き始めて何年になるの?また、どうしてギターを弾き始めたの?

Jason:自分がギターと音楽活動を始めたのは小さい頃からだよ。
8歳の時に最初のギターを買ってもらって、耳で曲を覚えてつま弾いてたんだ。
真面目にプレイし始めたのは14歳の時。だけど18で大学に入る歳まで何のレッスンも受けた事が無かった。
俺は今23歳だから真剣にプレイし始めて9年になるね。
ひとつだけ分かった事は、学ぶ過程に絶対終わりは無い、っていうこと。
音楽には本当に沢山学ぶべきことがあるよ。
仮にもし君がある一つの楽器を完全にマスターしたとしても(俺自身はまだまだだけどね)
「音楽」という面で見たなら、まだまだたくさん学ぶべき側面が出て来ると思うよ。
そもそもギターを始めた理由は、子供の頃ラジオから流れてくる曲がよく分かってなくてさ、
どうやってそんな凄い音が作られるのかが知りたくてたまらなかったから。
小さい自分にとってもの凄く不思議で、今すぐ何か楽器が欲しい!と思ったんだ。
で、7歳の時に小さいドラムを叩き始めたけどすぐに飽きて、代わりの何か…曲を作ったり習ったり出来るものが欲しくなって。
それで8歳のバースディの時に貰った50ドルで最初のギターを買った。それが全ての始まりってわけ。

ー君のプレイとPaulのプレイの違いって何だろう?

Jason:Paulと自分は音楽の好みは結構共通してるのに、プレイに関しては雰囲気が違う。作る曲の感じが完璧に違うから。
彼の方がクラッシックに近い感じかな。俺の方がよりジャズ風って言えるかもしれない。
俺達二人とも型にはまったやり方から離れようとしてるんだけどね。
俺達はそれぞれの個性を有効に使ってそれをひとつに合わせて、
誰も聴いた事の無い音を作り出そうとしてるから。
だからCYNICはユニークなんじゃないかな。
二人ともお互いの曲作りの方法を深く理解してるし、
お互いの出す音の個性を際立たせてから一つの曲の中に落とし込む。その結果が唯一無比の音楽になるんだと思う。

ー新しいベースプレイヤーのShawn(’94当時の名前表記)の事を教えて下さい。それから、前のベーシストのTonyとDarrenとは何があったの?

Jason:Shawnはとても才能あるプレイヤーだよ。すごく練習熱心だし色んな種類のミュージシャンと共演して鍛えられてるし。
彼はキーボードを弾くのも好きだし。あと俺がちょっとその辺にギターを置いておくと、自分のベースを放り出しては俺のギターを弾いてたりとか(笑)。
人間的にも面白い奴だよ。
前のベースのTonyとDarrenとの問題は、俺達が演りたい音楽と意見の食い違いがあったから。
彼等とは円満に別れたよ。Darrenがバンドを離れたのはスタジオに入ってた時で、そこでShawnに会ったんだ。
彼はそのMorrisound Recordingsで働いていて、そして俺達の長年の友人のスコット・バーンズから紹介されたんだ。
俺達は彼と一緒に演奏してみてすぐに彼が凄いベーシストだって分かったんだ。
そしてレコーディングが全部終わってから「もし俺達と一緒に演りたいなら…」って改めて聞いてみて、彼は同意してくれて。そういう訳さ。

ーところで話は変わるけど、DEATHの5th.アルバムは聴いた?どう思った?

Jason:2,3回聴いたよ。良いアルバムだと思うよ。リードギターがすごく印象的でさ。期待どおりの出来だった。

ー君が音楽以外に興味ある事って何?

Jason:音楽以外の興味っていうと、自分の人間としての中身を磨く事。
うちのペット達と遊ぶこと、彼らは一番信頼できる仲間でもあるんだ。
それと最近はあんまり乗ってないけどバイクに乗る事。
だけど自分の時間はほとんど音楽のことで一杯で、他の事をやる時間は少ししか残ってないんだ。

ーじゃあ最後に、日本の友達に何かメッセージを。

Jason:この記事を読む時間を取ってくれてありがとう。
それからアルバムを聴いてみてね、君等の為に作ったんだから。
そしていつも前向きであれ。それから他人と自分自身に思いやりを。
重ねて、ありがとう。